受験プロセスを知る

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受験プロセスを知る

アメリカのトップボーディングスクール群「テンスクール」の受験プロセスを例に、主な流れを説明します。実際の受験体験記は最後に「あわせて読みたい」記事として掲載していますので、そちらもご参照ください。

大まかな流れとしては、夏(7月)ごろから学校訪問などが開催され、出願締め切りは1月15日(アンドーバーのみ2月1日)です。

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学校訪問(7月~)

受けてみたいと思う候補校がリストアップでき始めたら、学校のウェブサイトのAdmission(入学情報)のページを見ます。Candidate Profileというのがあるので、そちらに基本情報をインプット・提出します。これを提出しておくと、学校訪問のお知らせなどがEmailで送られてきます。このプロフィールは興味があることを表明するためのものですので、最終的に出願しなくても全く問題ありません。興味があるので今後情報が欲しい、という表明です。候補校にはすべてこのプロフィールを提出しておくことをおすすめします。

学校訪問は7月ごろから日時が設定されます。学校訪問は必須要件ではないので行かなくても受験に不利ということはありませんが、可能な限り訪問することをお勧めします。なぜかというと、実際に行ってみると想像と違った(プラスの意味マイナスの意味両方で)ということが多々ありますし、自分の目で見たことのない学校を受験するよりも、訪問して惚れこみ「ここに行きたい!」と心から思える学校に出会えれば、今後の大きなモチベーションになります。

学校訪問をオンラインで予約する際に「学校見学&インタビュー」または「学校見学のみ」という選択肢があります。前者の場合、1時間弱の学校見学の後インタビューに呼ばれます。後者の場合は、後日(数か月後でもいつでもOK)インタビューをオンラインで別途予約して受けることになります。インタビューは対面でもオンラインでも評価に違いはないと言われていますので、どちらにするかは好みです。せっかく学校まで訪問したし対面の方がうまく話せそう、と思う場合は対面で、まだ準備不足だし後日にしたいということであれば後日オンラインにしましょう。後日オンラインにする際はぜひ学校を訪問した時の印象などをぜひアピール材料に使いましょう。

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インタビュー(7月~)

前述の通り、学校訪問時に対面でインタビューを受けるかオンラインで受けるかのどちらかです。日本の受験の流れと異なり勘違いをしがちなのですが、合格者のみがインタビューに進むのではありません。インタビューが必須要件の学校では、出願締め切り日までにインタビューも受けておく必要があります。出願締め切りが近づくにつれてインタビューの予約枠が埋まり、予約が取りづらくなります。また、日本からでしたら時差の問題もありますから、早めに予約を確保しておくことをおすすめします。

インタビューが苦手と感じる学生さんも多いのではないでしょうか。日本の教育環境ではこのような経験が少ないので当然です。インタビューのコツは「質問されたことに答える事の繰り返し」というような一方通行ではないと意識することです。自分が行きたい学校のアドミッションの方に「自分を知ってもらうチャンス」ととらえ、さらに「双方向の会話」になるように意識すると良いと思います。例えば志望理由を聞かれたとしましょう。●●のカリキュラムに興味があると答えるだけでなく、自分はこれまでどうやってその分野を勉強してきたか関連事項をアピールしたり、そのカリキュラムについて聞きたい事を質問をしたりすると、会話になっていきます。答えに正解は存在しないのですから、無難な答えより自分のアピールにつながる答え、を意識して、インタビューを楽しむぐらいの気持ちでやりましょう。

インタビューは、練習をすればするほど自信がつきスムーズにできるようになっていきます。インタビューの練習をしたい方は、こちらからどうぞ。

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テスト受験(8月~)

日本の受験のように、試験日の決まった一斉テストではありません。テスト日は自分で選ぶことができますし、複数回受けることも可能です。テストの種類はSSATやISEEなどで、スコア提出が任意の学校もあります。また、英語が母国語でなく英語を主な指導言語としない学校に通っている生徒は、英語力を示すためのテスト (TOEFL iBT, IELTS, etc)が追加で必要です。

SSATとISEEの試験科目は下記の通りほぼ同じです。

<SSAT> Verbal (ボキャブラリ)、Reading (英文読解)、Quantative (算数)、エッセイ

<ISEE > Verbal(ボキャブラリ)、Reading (英文読解)、Quantative Reasoning (算数)、Mathematics Achievement (算数)、エッセイ

どちらもエッセイは採点されませんが、参考としてテスト実施機関から学校へは提出されます。上記の通り、SSATは算数のポーションが3分の1、ISEEは算数のポーションが半分、かつISEEの方が算数が難しめなので、算数が得意な生徒はISEEを受験した方がよいという意見もありますが、ISEEはシーズン毎に受験回数に制限があります。シーズンは秋(8月~11月)、冬(12月~3月)、春/夏(4月~7月)に分かれており、1シーズン内で1回しか受験できません。出願締め切り日が1月または2月であることを考えると、ISEEは多くて秋と冬に1回づつということになります。また、SSATは結果がパーセンタイル(99 percentile が最高)で出ますが、ISEEはパーセンタイルとStanine Score といって1~9(9が最高)のスコアが出ます。スコア9は96パーセンタイル上です。なお、こうしたスコアは得点そのものではなく、受験者の中での相対位置を示すもので、過去3年の受験層中でどのぐらいの位置にいるかを示しています。受験するのはボーディングスクールを含めた私立高校に進学したいと考えている生徒ですので、その中で90パーセンタイル(トップ10%)を取るのはなかなか大変です。ちなみに、最難関校フィリップス系の合格者平均はSSATで93%前後のようです。ただし、テストスコアが80%台でも合格する生徒もいるなど、その基準は一律ではありません。

上述の通り、テストスコアは審査項目の1つにすぎないのでテストスコアに固執し何度も何度も受けてスコアを1点でもあげようというアプローチは不要ですが、よいスコアを提出するに越したことはありませんので、受験時期も含めたプランが必要です。

また、インターナショナル生に必要なTOEFLもスコアアップに向けた努力はもちろんですが、「この生徒は有望だ」と思ってもらえるその他の資質も磨き、アピールできるようにしていきましょう。

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成績表・推薦状の提出(10月~)

10月になると、テンスクールのアプリケーションシステムがオープンします。テンスクールは共通のシステムを使っているので、その中から受験したい学校を選ぶと各学校に提出すべき物が一覧で管理できるようになります。学校によって多少の違いがあります。成績表や推薦状の提出は、このシステム経由で先生やカウンセラーに依頼をかけ、彼らから学校へ提出してもらうものなので、時間に余裕を持って依頼しておくことが大切です。これらについては自分のコントロール外ですので、普段から学校生活に真摯に取り組んでおきましょう。

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エッセイ(10月~)

アプリケーションシステムがオープンすると、エッセイの課題も見ることが出来るようになります。学校ごとにエッセイのテーマは異なりますが、一貫しているのは「あなたはどんな人?」という点を問われているという事です。題目そのものは違っていても、自分はどんな人間かということを主張する事が大切です。かといって、受賞歴などを羅列するのではありません。そういった内容は別の箇所で記載する場所があるので、エッセイではなぜ自分はそういった学業・活動をしてきたのか自分を見つめ直してみることが大切です。自分を振り返って文章に落とし込むことは、後々の人生にとっても非常に良い勉強になります。一気にやっつけようとせず時間に余裕を持って何度も見直してみると良いと思います。

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出願日(1月15日または2月1日)

アプリケーションシステムですべての必要書類が提出された事を確認しましょう。期日が近づくにつれ、未提出の提出物については通知メールが何度も来ますので「出し忘れた」ということは起きないと思います。しかし、期日間近になるとシステムにアクセスが集中しシステムダウンすることもあるようですので、時間に余裕を持っておきたいところです。最後の「Submit」ボタンを押したら・・・お疲れ様でした!

果報は寝て待てですね!

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合格発表(3月10日前後)

テンスクールすべてが同日に合格発表です。オンラインで自分のアドミッションのページに進むと合否が分かります。ドキドキの一瞬ですね。


さて、上記の通り各ステップを説明してきましたいかがでしょうか?

大変そう…とお思いでしょうか?あくまでこれは最難関校を例にとったものですので、もっと簡易な学校もたくさんありますし、ローリングアドミッションと言って定員になるまで年間通じていつでも願書を受け付けている学校もあります。今思い立ってすぐにでも、という場合は条件に合う学校を探して、まずはアクションを起こすことが先決です。アドミッションのページからCandidate Profileまたはそれに類するものを記入して、出願をスタートする=今後の通知をもらえるようにすることです。途中でやめるのは自由ですから、まずは最初の一歩を踏み出しましょう。

最終的に合否がどんな結果になろうとも、こうした準備期間にやってきたことは今後の人生に必ずプラスになります。テスト勉強にとどまらず、これまでの自分を見つめ、自分の進路について真剣に考えたことは決して無駄にはなりません。選考基準も、日本のように学力テスト一辺倒ではないので、自分では自信があった学校には合格できず、高望みと思っていた学校に合格した、という事もあります。学校が評価する生徒像にマッチしたかしないかであり、その基準は一律ではありません。例えば仮に全く同じ成績で全く同じ課外活動をしていたとしても、ある子は合格し、ある子は不合格ということもあります。年によって求める生徒像も違ってきます。自分がマッチするのかしないのか、分からないのにあきらめるのはもったいないでしょう。また、こうした出願プロセスは、大学の出願プロセスと非常に似ています。もし結果が思わしくなかった場合も、大学に向けたよい練習になります。将来は海外へ、と思っている方はぜひ早めの段階でチャレンジしてみましょう。

せっかく興味を持った道ですから、まずは一歩を踏み出すことです。次は、受験対策の詳細について見てみましょう。

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